Wednesday, September 27, 2006

アベっちのサッチャー的教育政策

今日の東京新聞はいかにも反アベっち政権な記事が満載なので、提灯持ち記事を求めて(失礼)sankei.co.jpを訪問しました。東京新聞は反官僚な記事も載せすぎですね。アベっちの思う壷でしょう。

sankei.co.jpにはあんまり提灯持ち記事がなくて、残念です。本紙を読まないとダメですか。

こんなところで反アベっち表明というのもどうかと思いますが、まぁいいではないですかと開き直ります。アベっちの教育政策はイギリスのサッチャー政権を参考にしているそうなので、それについて自分の別のブログで書こうと思いましたが、意見ではなくて解説が多いエントリーになりそうなので止めました。それで、ここで書くことにしました。


アベっち政権(というか最近の自民党政権)は日教組(日本教職員組合)といわゆる官公労をつぶそうとしていますが、そういったことを指摘しても意味ないですね。国民世論は労働組合を支持しなくなっていますから。組合の組織率は低迷していますし、教師や官僚の影響力は低下していますというかもともとそれほどないので、組合つぶしはあまり意味がありません。しかし、労組が改革を邪魔しているとか既得権益を持っているとかで、国民世論は組合つぶしを支持しているようです。労働市場の流動化や柔軟化はグローバル時代には必要なのかもしれませんが、そこから利益を得るのはほんの一部の人です。専門知識(とその獲得過程)や専門職の軽視は国家社会の存立を危うくすると思います。

利害当事者なのに、政策決定からはずさていた大多数の国民は改革路線を支持しています。専門家支配も嫌っています。官邸と国民世論を直接つながる、(擬似)直接民主主義の実現を国民世論は求めています。自民党の政治家は住民投票には否定的ですが、アベっち政権はそれを(擬似的に)実現するでしょう。

こんな解説はまったく必要ありませんね。

教育政策でアベっちは、教育市場の自由化を行おうとしています。教育も市場に組み込まれるようです。アベっちは学校バウチャーと学区制自由化を導入するそうです。サッチャー政権は公立学校の入学定員自由化と生徒数に応じた予算配分方式を導入しました。似ていますね。これによって学力が向上するはずだ、というわけです。親なら誰でも自分の子どもを少しでも良い学校に行かせたいと思うでしょう。しかし、イギリスで実際に起こったことは学力格差でした。つまり学力底辺校問題が顕在化しただけでした。日本では高校あたりでこの問題が顕在化するわけですが、今後は義務教育段階で顕在化するでしょう。特に学校選択の幅の広い都市部では数年で表れると思います。全体的な学力向上は望めないと思います。イギリスでは学力が劣る生徒は切り捨てられました。学校の質を上げる=生徒が集まる=予算が増える、という政策の下では当然過ぎる結果でした。義務教育段階での、学校の序列化は避けられないでしょう。

学力が劣ると判定された生徒の学力の向上は見込めるでしょうか。それとも良き労働者でいてくれればよいということでしょうか。一斉授業は悪平等と批判され、学力別授業も行われているようですが、今後は学校レベルで行われることになります。果たして学力別授業は、学力を向上することができたのでしょうか。それとも固定化しただけでしょうか。サッチャー政権の超個人主義というか自己崇拝がいじめを増長させたように、日本では人間の序列化が生じて目に見えるいじめが増えると私は思います。自己への配慮だけでなく、他者への配慮も失われるでしょう。不公正で不平等な社会というものはそういうものです。

もちろんアベっちは家族政策にも力を入れるようですから、心配しすぎかもしれません。しかし、”あたたかい”家庭が国家や学校によって破壊されるようでは意味がありません。

また学校評議会も導入されるようです。これは、教育委員会や教師を飛び越して無用化することになります。日教組の教師に支配されている学校を地域や親の手に取り戻そうというスローガンになるでしょう。”左翼に支配されている”公教育を保守政権の側に取り戻すというわけです。しかし、教育は政権支持者のためにあるわけではありません。学校や教育は多くの人の利益のために存在するはずです。政権のための教育は教育と呼ぶことはできないと思います。サッチャー政権でも似たようなことが行われましたが、組合やコミュニティを破壊し、寛容さを失った社会を生み出すことになりました。

サッチャー政権は人頭税の導入の不評から退陣しました。アベっち政権でも消費税が正念場となります。この問題をどう処理するでしょうか。対応しだいでは、サッチャー政権や国民福祉税で退陣した細川護熙政権と同じ道を歩むことになるかもしれません。それとも、新たな敵を作り出したり、ナショナリズムを煽ることで乗り切ろうするでしょうか。アベっちは祖父の岸信介を範としているようですから、国民に情報は与えず、議会を無視し、政府を信じろと言うのでしょう。


参考にしたもの

イギリス教育改革の変遷-ナショナルカリキュラムを中心に-』国立国会図書館 レファレンスNo.658 (2005年11月)(pdf)

『サッチャーの遺産-1990年代の英国になにが起こっていたのか-』岡山勇一、戸澤健次 晃洋書房(2001)

アメリカ:連邦最高裁判所、スクール・バウチャーに合憲判決』国立国会図書館 外国の立法No.214 (2002年11月)(pdf)