Monday, January 16, 2006

インドは社会主義国なんだけど・・・

中国を牽制するために、インドとの連携を強めようという動きがあるようだ。安倍官房長官はNHK番組で

日中関係だけではなくアジア全体を見る必要がある。インドやオーストラリアなどと自由、民主主義、基本的人権、法の支配というキーワードを軸にマルチ(多国間対話)の場をつくってもいい

と語った。自由、民主主義、基本的人権、法の支配を軸に連携を強めるのは好ましいことではある。しかし、インドは社会主義国である。マルクス主義的な意味ではない。インドは世界最大の民主主義国であると同時に、最も成功した社会主義国でもある。インドの国家理念の理想は非常に高いのである。もちろん、理想的目標はかかげていても、現実とはあまりに距離がある

インド憲法の前文には社会主義国であることが明記されている(Constitution of India - Wikipedia)。

WE, THE PEOPLE OF INDIA, having solemnly resolved to constitute India into a SOVEREIGN SOCIALIST SECULAR DEMOCRATIC REPUBLIC and to secure to all its citizens:
JUSTICE, social, economic and political;
LIBERTY of thought, expression, belief, faith and worship;
EQUALITY of status and of opportunity;
and to promote among them all
FRATERNITY assuring the dignity of the individual and the unity and integrity of the Nation;
IN OUR CONSTITUENT ASSEMBLY this twenty-sixth day of November, 1949, do HEREBY ADOPT, ENACT AND GIVE TO OURSELVES THIS CONSTITUTION
SOCIALISTという単語は1976年の補正で加えられた。インドの指導者たちは社会主義傾向が強かったから、それが反映されたのだろう。制憲の父アンベードガルもネルーもそうだ。そこには政治的民主主義だけでなく、社会的民主主義、経済的民主主義の実現の理念が込められている。志が高いのである。

経済において、中国リスクを回避するために投資先をインドに切り替えようとする動きもあるようである。しかし、インドは日本と違って労働者保護の政策が手厚い。とてもすばらしいことだ。しかし、この点がインドリスクとなる可能性もある。実際、それは顕在化し始めている。トヨタ自動車は、インド南部の都市バンガロール近くのキルロスカル工場でのストライキが3日目に突入したことを受け、同工場を無期限閉鎖すると発表した

インドと手を組むのもわるくない。しかし、日本の思惑だけで手と結ぼうとしてもうまくいくとは限らない。


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