Tuesday, December 20, 2005

生命倫理なんて飾りです

産経にからむ。

12月19日朝刊の産経抄が韓国のES細胞を取り上げている。メディアや世論の反応のおかしさを指摘するのはいいのだけれど、生命倫理の考え方が変であろう。ここで想定されている生命倫理が人権思想寄りであることに気付いていないように見えるのである。産経は人権思想を流布する立場なのだろうか。通常、生命倫理において、ヨーロッパは人権思想寄り、英米は個人主義寄りとなっている。そのことに気付いているのだろうか。ただ単に無意識にヨーロッパの考え方を取り入れているのか。

ヘルシンキ宣言を持ち出すのはかまわない。しかし、こういった考え方がナチスの人体実験に対する反省のひとつの表れだということを分かっているのだろうか。ヘルシンキ宣言は医学の進歩のための人体実験の必要性を前提としつつ、人権擁護、あるいは尊重の原則を保つというものである。いうなれば、医学研究を人権思想によって制限するという考え方なのである。産経はそんなに人権思想をよいと考えていたのか。

”神の領域”という表現も変だ。ここで言う神は、ユダヤ教-キリスト教-イスラム教の神だろう。それほど日本的とは思われない。産経は日本思想をどう考えているのだろう。日本思想による生命倫理を構想しているのだろうか。

科学がいかに進歩しようと、人は神になれない。それを忘れそうになる研究者のおごりをいましめるのがメディアや世論の役割だ。」と書くのはよいが、何によっておごりをいましめるのか。何によって生命倫理を基礎付けるのか。人権思想なのか、それとも(日本的でない)神を持ち出すのか。産経は人権思想によって科学を制限しようとしているのだろうか。韓国批判に気を取られているあまり、生命倫理についてまったく考えていないのではないか。

そうそう、日本ではちょっと考えられないのは、日本では生命倫理も人権思想も十分定着していなし、理科離れで科学に関心ないから、というより理解できないから、ことが起こっても騒げないのではないだろうか。

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