Wednesday, December 21, 2005

情報爆発、あるいは誤報爆発

マレイ・ゲルマン「クォークとジャガー―たゆみなく進化する複雑系」より引用

情報(それとも誤報?)爆発

不幸なことに、情報爆発はその大部分が誤報爆発である。私たちはみんな、その大半がまちがっているか、まちがって解釈されているか、あるいは単に混乱しているデータ、アイデア、結論からなる大量の情報にさらされている。もっと知的な論評と批評が緊急に必要とされている。

私たちは、真面目な評論記事や著作に、もっと高い評価を与えなければならない。これらはまさに創造的な活動であり、信頼のおけるものとおけないものとを区別し、信頼がおけると思われるものを、かなり成功した理論とそのほかのスキーマの形で、系統だてて要約する。もし学者が、学問の身開拓の領域で新しい研究結果を発表したなら、のちになってその結果がまったくの間違いであることがわかったとしても、その学者は教授職を得たり昇進したりすることで報われるだろう。しかし、すでになされたことの意味を明らかにしても(あるいは学ぶ価値のあるものを、そうでないものから選り分けても)、学問的な経歴が上がることはあまりないようである。報酬の基準が変わって、経歴に対する淘汰圧が情報の収集と分類に対して働くようになったほうが、人間はずっと幸せになるだろう。

今話題の、韓国のES細胞の騒動においても、「きっこの日記」をめぐる騒動にも上記のことが当てはまるだろう。韓国の研究では追試による再現が必要であるし、「きっこの日記」においてはそこに書いてある情報の選り分けが必要である。それらに対して冷笑的になっても、得るものは何もない。

当然のことながら私のブログには”知的な論評と批評”はまったくないので、よそをあたって欲しい。


マレイ ゲルマン, Murray Gell‐Mann, 野本 陽代 / 草思社(1997/08)
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